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沖縄 居酒屋を呼び出そう

巨大なたばこ会社を敵に回し、一七三億ドルの和解金を勝ち取ることに成功した。
「シャーク(鮫)」という津名の面目躍如だ。 まだ公判も始まってないのに、Tが和解に同意したのも理解できる。
法廷闘争に持ち込んだ場合、R弁護士は、「おそらく賠償金額は八○億ドルから九○億ドルに達し、Tは会社自体を失っていたはずだ。 あの状況では、和解が彼らの唯一かつ賢明な選択だった」と断言した。
弁護士を志した動機を、彼は「カネが目的ではなく、あくまで社会的弱者を助けたかった」と語る。 たしかに過去の記録を調べると、飲み屋の用心棒に怪我をさせられた人間の弁護などが残っている。
その点、社会正義など考えたこともなく、暴力団の手先として走り回る一部の弁護士とは違う。 だが、大企業を標的に巨額和解金を奪う手法は、経済界で「ハイエナ」と嫌悪感を生んでいるのも事実だ。
もう一つは「インサイダー」。 たばこ産業の不正を告発するために、さまざまな妨害や攻撃と闘う元幹部J・W(R・C)とテレビ・プロデューサーのR・B(A・P)の物語だ。

いずれも生臭い話だが、大半の企業や人物が実名で登場する。 そして、両方とも興行面で成考した。
経済界のスポークスマン的存在であるW・S・J紙は、彼を「被害者が法律事務所を訪れる前に、自ら問題を探し出し、訴訟を奨励する新人種」と皮肉を込めて紹介している。 一方で、ビッグ・ビジネスの不正を暴き、一般市民の代りに巨額のカネを奪うR弁護士を英雄視する人がいるのも事実だ。
この認識のギャップはいったい、どこから来るのか。 この疑問を解くには、九○年代に誕生した巨大企業群と、米国民の問に広がる警戒心を知っておく必要がある。
二○○○年、米経済界の幹部をカンカンに怒らせた、二つの映画があった。 一つは「E・B」。
J・R演じる、三人の子持ちの女性が、環境を汚染して住民に健康障害を招いた大企業に裁判を起こし、米史上最高額の和解金を勝ち取るストーリーだ。 実話に基づくこの作品は、全米で興行収入一億ドルを超す大ヒットとなり成功を収め、アカデミー賞にノミネートされるなど大きな話題を呼んだ。
経済のグローバル化で、九○年代に国境や業種を越えた企業の合併・買収が加速した結果、かっては考えられなかった巨大企業が出現してきた。 自動車メーカーGの年間売上げはイスラエルのGDP(国内総生産)を上回るし、石油メジャーのEもポーランドのGDPを凌駕する。
流通大手のWSの年間収入は、世界一六一ヵ国のGDPを合わせたよりも大きい。 また世界のパソコン市場を支配するMSなど、怪物のようなビッグ・ビジネスが続々と誕生した。
これら再編劇を受け、米国では「ソーシャル・ダーウィニズム」という言葉が広がりつつある。 一九世紀に『種の起源』を著した英国の学者C・Dの学説が、グローバル経済下での企業再編に当てはまるというのだ。

生物界ではさまざまな種の植物、動物が生息する。 その間で競争が行われ、より優れた資質を持つ者が、劣る者を征服して子孫を殖やしていく。
この生物界の「競争原理」と「適者生存」が、二○世紀の植民地主義を正当化する理論として利用された。 そして、この弱肉強食のルールはビジネスの世界にそっくり応用できる。
米国の名門大学では、MBAのカリキュラムに生物学を含めるところまで現れた。 当然、生存競争に一人勝ちする者への風当たりは強い。
Tパソコン訴訟の余波がまだ残る頃、B・W誌は、米国民が大企業に抱く嫌悪感について特集を掲載した。 このなかで同誌は、国民のじっに七二パーセントが、巨大企業の市民生活への悪影響を懸念しているとのアンケート結果を紹介した。
これらガリバー企業への反発は米国社会に大きな緊張を生んでいるという。 「反企業運動はかっての反体制運動より目立たないが、はるかに危険な影響を秘めている。
六○年代は戦後ベビー・ブーマーが反ベトナム戦争や性の解放を訴えたにすぎなかった。 しかし、今度の反企業運動は、米国のあらゆる世代、地域、所得層を越えた広がりを見せている」のだという。
この反大企業の空気を見誤ると、とてつもない司法リスクに直面し、会社の存立すら脅かされる。 二○○○年の夏、大手タイヤメーカー、Bの米子会社が起こした欠陥タイヤ事件も、その典型的なケースだった。
ことの始まりは、米国で走行中の車のタイヤ表面が突然剥がれ落ち(トレッド・セパレーション)だ。 下はその抜粋だ。

二○○○年一○月、あなたはFを相手どって世界規模の集団訴訟を起こしま同社は慌てて数百万本規模のリコール(無料の交換、回収)を始めたが、全米で事故の被害者や家族が損害賠償訴訟を連発する事態へと発展した。 その原告側弁護士の一人がK・Mだった。
シカゴに事務所を構え、これまでもタバコやホットドッグなど企業への製造物責任訴訟で名を馳せてきた、やり手の弁護士だ。 Fの欠陥タイヤ問題で、彼は米国だけでなく、サウジアラビア、ベネズエラなどで訴訟参加を呼びかけ、世界規模での集団訴訟を指揮してきた。
わが国でM弁護士の名前が取り沙汰されたのは二○○○年三月、米国の新聞が、「Fへの損害賠償請求額は五○○億ドルに達する」という彼のコメントを報道した時だった。 このため、東京証券取引所で親会社Bの株価が暴落し、同社のK・Y社長(当時)が緊急会見する騒ぎとなった。
その直後、騒ぎの発端となったM弁護士にシカゴでインタビューすることができた。 「米国で発生した欠陥タイヤ問題で、海外からも訴訟に参加させるのはやりすぎだ、との批判がありますが」と。
これまで手がけたタバコ訴訟などに比べ、今回のFの件はいくつかの点で違いがある。 まず欠陥タイヤが、日本企業Bの一○○パーセント子会社である米国のFで生産されていたこと、ここで製造された欠陥タイヤが全世界に流通したことだ。
いわば世界中の人間が同等に被害に遭ったことを意味する。 問題になっているトレッド・セパレーションはサウジアラビアで発生しようと、ベネズエラ、米国で起きようと同じだ。
そして欠陥タイヤ製造に至る決定はここ米国でなされたのだ。 (この時点で)世界中から一○○○件を超える訴訟参加の申し出を受け取った。
これまであなたが手がけたタバコ訴訟と比べて、今回の欠陥タイヤは難易度においてどうですか。 かつてタバコ会社を訴えた時、被告たちはこう反論してきた。
『健康被害の賠償を求める人々は、喫煙によるリスクを承知したうえで吸い続けたはずだ』と。 Fのケースは非常に単純、明快だと思う。
学校でサッカーの練習を終えた子供たちを母親が迎えに行く。 親子で車に乗り帰り道を急ぐ。
その車のタイヤ表面が突然剥がれ落ち、痛ましい事故が発生する。 はたして彼らがタイヤに欠陥があると知りえたか。

不可能だ。 今回はタバコ会社のような反論は出ず、早期に解決できると思う。
しかし、重要な点は、Fが数年前から自社タイヤの欠陥を知りつつ行動を取らなかったという事実だ。 彼らが欠陥タイヤの情報を隠蔽したというわけですか。
その通り。 われわれは一九九八年にサウジアラビアから東京のBに送られた内部文書を入手している。
トレッド・セパレーション発生に関するものだ。 また一九九七年に技術者から副社長に宛てた文書でも、彼らが問題の所在を知っていたことを示す内容になっている。


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